今日の写真はうちの近所にある2本の柿の木で、いづれも12年ほど前に撮影したもの。
Kさんの柿の木 EOS Kiss X6i EF-S60mm F2.8 マクロ USM (撮影:2014年1月29日)
冬の夕刻、そろそろ切り上げようかとふと見上げた稜線に、お二人の姿があった。
いつも散歩で出会う顔馴染みのご婦人方だ。咄嗟に柿の木のシルエットを入れてカメラを構えた。シャッターチャンスはわずかだったがギリギリ間に合った。
この柿の木は、Kさんの所有地にポツンとある甘柿。Kさんはこまめに草刈りを行い、道路沿いに続く細長い畑はいつも整然と手入れが行き届いている。作業に出る時は必ず飼い犬の「ベス」同伴だった。ベスはリード無しでのんびりあちこち徘徊していたが、Kさんが呼べばすぐに戻ってくるおっとりしたラブラドール・レトリーバー。時々はうちのチョロのところにも遊びに来たりしていた。
Kさんの柿の木 EOS M3 EF-M11-22mm F4-5.6IS STM (撮影:2015年5月2日)
抜けの良い場所に立っているKさんの柿の木は、四季を通して色々な方角からカメラを向けてきた。
農地と湿原が広がる風景の中でアクセントとなる柿の木。振り返ってみると過去に撮った写真の数は多い。
kさんは大阪でサラリーマン生活を過ごしたあと、生まれ育った土地へUターンした。農地も多くあって田舎暮らしを楽しんでいる風だった。私たち家族が東京から引っ越してきた当初は、「都会からわざわざこんな田舎に引っ越してきて、あの家族はいつまで保つやろ?」と遠目に観ていた、ともあとで聞いた話である。柿の木のある畑はうちのすぐ傍なので、顔を合わせる機会も多く、引っ越して最初に一番の知り合いになった。何度かうちの家庭菜園の畑をトラクターで耕してくれたりもした。
Sさんの柿の木 EOS-6D EF24-70mm f4L IS USM (撮影:2014年1月20日)
こちらは、Sさんの畑の隅にある柿の木。渋柿だったがKさんの柿の木よりか一回り小振りである。
Sさんも畑には繁く通い、長時間しゃがんで草抜きする姿をしばしば目にしていた。薪集めであちこちの林を訪れていた、元気なお婆ちゃんだ。ナタを振るう「コツン、コツン」という音がどこかしら聴こえてきて、「ああ、Sさんだな」と家にいながらも分かるのであった。たまにはうちの林に来ることもあって、そのときは必ず野菜を持って挨拶に来られた。
Sさんの柿の木 EOS Kiss X6i EF-s 10-18mm F4.5-5.6 IS STM (撮影:2015年5月29日)
さて、、、、わずか12年ほどの年月を経る中で、上写真4カットの風景は一変してしまった。
Kさんの柿の木はまだ健在だが、周辺の畑は荒れて草藪となりアカメガシワやクワなどの灌木まで入り込んで、そこに畑があったこともわからなくなっている。柿の木そのものもキヅタにびっしり覆われてしまい、輪郭すら判然としない。
じつはもう数年前に、Kさんは亡くなっている。そのため、畑の手入れもまったく為されなくなって久しい。
そして、Sさんの柿の木だが、こちらは理由は分からないが数年前に根本から切り倒されて処分された。その後、Sさんも2年前に亡くなられた。ご高齢でありながら元気で畑にもずっと通っていたが、突然、ご病気で他界された。
フィールド巡り、散歩の折にはその都度、写真に納めていた二本の柿の木の風景は今ではすっかり変貌してしまった。
もう二度と同じ光景を眺めることは叶わない。家族同様に暮らしていたベスもチョロも、今はいない。
ちなみに、Kさんの柿の木の秋に撮影した写真が、
『里山のことのは』(幻冬舎:2009年)の184-185頁に掲載されている。たわわに果実をつけた年であった。
posted by やまかます at 21:10|
風景