
ハナグモのメスが、キマエアオシャク幼虫を捕食していた。
クヌギの若葉先端で見事な隠蔽擬態をしたキマエアオシャク幼虫だが、ちょっとした動きを察知されたのだろうか。生きものの世界ではいろんなことが起きる。「安心、安全」という言い草も虚しい。

隣のスギ林で営巣中のハシブトガラス。梢から梢へと渡り歩き、餌を探していた。
カラスのことに興味を持ち始めたのは、以前、セミの写真絵本(『はじめて見たよ!セミのなぞ』(少年写真新聞社:2017刊)を作ったことがきっかけだった。
本書のためセミの天敵として野鳥が捕食するシーンの写真を撮ることになった。そのとき選んだ撮影場所が都会の公園だった。セミ自体も公園に多いこと、公園だと野鳥が人馴れしていること、などの条件から、都内の日比谷公園と代々木公園を撮影場所として選んだ。公園もできれば人口密度が極端に高い方がいい。
とは言え、野鳥がセミを捕食する場面に出会えるチャンスは少ない。いや数日の滞在期間ではとても無理。それでも出たとこ勝負とばかり上京した。それでまずは日比谷公園を歩くもまるで手応えなし。そもそも猛暑の中、当てにしていたヒヨドリの姿が皆無だった。次に代々木公園に出直してみた。すると、こちらではカラス、特にハシブトガラスがウヨウヨいる。カラスを見ているうちに何とかなるかな、と淡い期待を抱き始めた。広大な公園をゆっくり歩いているうちに、地面を歩いている(ホッピング)カラスの動きが目に止まった。そのうち、地面を嘴で掘っているカラスがいた。
何かを啄んだが最初は遠くてよくわからなかった。たまたまではなく他のカラスも同じ行動をとることがわかった。これは何かある!?地面に佇むカラスを見つけるとすかさず望遠レンズで追尾。ファインダー越しに確認してみると、地中からセミの幼虫を引っ張り出していた。なるほど!カラスは、セミの幼虫が羽化当日に地面近くの坑道で待機していることを、小さな窓穴から見抜いていたのだ。昆虫写真家なら誰でも心得ている(はず)、セミの幼虫探しには欠かせない技である。カラスの気持ちが手に取るように伝わってきたのは言うまでもない。
その後、福岡市や都城市の公園でも全く同じ「セミ幼虫掘り」行動を観察できた。
セミの幼虫掘り、というカラスの採餌方法を知ってから、俄然、カラスたちへの興味が深まり始めたのであった。そうやってカラスを眺める時間も増えて興味を深めていくうちに、カラスの姿の美しさなどにも改めて気付くようになった。
〜 本の紹介 〜
伊藤知紗さんの最近作、『だんごむし と あめのひ』(ひかりのくに)は、だんごむしシリーズ第5作目。

創作物語だけど、子どもたちに生きものを通して自然への関心を抱いてもらえるかと思う。大人も一緒に楽しめるのは、優しい絵のタッチに加え、ストーリーや登場する生きものたちの姿が、伊藤さんの丹念で緻密な自然観察に基づいているためであろう。
先日、伊藤知紗さんが日頃から通っているフィールドに案内いただいた。清瀬に住んでいた頃にも飯能市のフィールドには何度か通ったことがあったけれど、それはまるで表層部を眺めていたに過ぎなかった。伊藤さんの目が捉えた昆虫の世界にはいつも驚きと発見を授かっている。