
朝食を終えて片付けていると、台所の流しにクサヒバリのメスがいた。
しかも、長翅型。長翅型のメスは初めてみたように思う。

かなり昔、東村山市のアパートに住んでいた頃、このクサヒバリの産卵行動を撮影したことがある。
産卵管を腹の下にほぼ直角に曲げてから、マサキの小枝に突き立て組織内に卵を産み込むのである。その逐一を目の前で演じてもらえた時の喜びは、今となっても色褪せない。
ひとしきり産卵を行ったあと、クルリと頭を下向きにしてから迷うことなく地面に向かって降りる。
地面に着くと土粒を口に咥え、産卵した枝へと戻って行く。そして、おそらく唾液を混ぜた土粒を産卵口の上に被せるように塗りつけるのである。
この産卵行動の一連の写真は、『里山昆虫ガイドブック』(2002年:阪急コミュニュケーションズ(当初はTBSブリタニカ)の誌面(44頁:産卵)に掲載している。が、写真画像が小さいのでわかりづらいかもしれない。
この産卵シーンの撮影は、アパートの4畳半の片隅で行った。小さな小さな机上スタジオで。

いつの間にか庭に育っていたタブノキの若木は、せいぜい40センチほどの高さしかないけれど、葉っぱには縁から齧った食痕が目立ち、探す前にアオスジアゲハ幼虫の姿がすぐ目に入った。まだ4齢だろう。
熟齢まで育ち切れるのか気がかりだが、食糧の残りは心許ない。しかも、台風10号の接近に伴い、ここ宮崎南部でも夕方から猛烈な風と雨が吹き荒れるようになった。庭の地面では雨水で大きな水溜りがどんどん膨らんでいる。
避難する術もない幼虫にとって、この災難を乗り切るのはかなり難しいように思える。自分の家屋にも降りかかりそうな災難を横に置いて、森や林では一体どれだけの小さな命が消えていくことだろうか、などと想像してみた。