7月に刊行された、森上さんの『ようこそ 虫のぬけがら博覧会』(少年写真新聞社)。

昆虫が成長していく過程で必ずくぐり抜けていく脱皮という儀式。その儀式を無事に終えましたというメッセージを、森上さん独特のセンスで受け止めて、写真劇場を披露している本です。頁数もこの類の写真絵本としては異例の64頁と内容盛りだくさん。森上さんご自身で「自信作」とおっしゃるのを、私は直接、お聞きしたことがありますし、ご自身のブログにも書かれてあります。自信作という言葉はなかなか聞けるものではないですが、構想を長年かけて練り上げ、気合のこもった渾身の力作であることは疑いないかと思います。ぬけがらの写真は、「虫のしわざ」という視点で私もずいぶんと撮影していますが、それはあくまでも博物記録の域を出ることはなく、森上さんのように一冊の劇場本に仕立てようなどとは考えたこともありませんでした。
森上ワールドがいよいよ磨きをかけて、今後もさらに続編・新編が誕生するのではと思います。
8月に刊行された、尾園さんの『くらべてわかる トンボ』(山と溪谷社)。

トンボの本格的な図鑑をすでに著している尾園さんが、今回の本では生態写真を使って、それこそ手取り足取りで、トンボの見分け方、名前調べを誘ってくれます。
なんのキャプションが無くとも眺めているだけでも綺麗な生態写真に、惜しげもなく、体の細部の特徴が引き出し線で書き込まれています。それはまるで、フィールドの現場で尾園さんが立ち会ってくれて、直接、教えてもらっているような臨場感に溢れています。尾園さんが長年培ったフィールドノートが、B5判と大きめで見易いサイズの美麗本となったとも言えます。これから昆虫写真を始めたい人にとっては、トンボの識別だけでなく、どういうアングルでどんなタイミングで撮影すればいいのか、トンボ撮影入門のための手引きにもなるでしょう。
トンボの名前調べという実用面だけでなく、眺めて読んで、トンボの世界の魅力をじっくり味わえる内容の本です。