ある昆虫のしわざを撮影するため、街中の公園に出向いた。
しわざが残っている植物の名前もすぐにわかる写真が必要なので、その条件を満たすしわざを探し歩いていると、
目の前でハシボソガラスが地面を何度も嘴で突いていた。

これは何かある!カラスが見つけた、狙っている、獲物は何だろう?
獲物はカラスにとって魅力あるらしく、私がゆっくり近づいても逃げようとはしない。
カメラのレンズは12-100mmと、鳥の撮影には短い焦点距離だったが距離をつめることができた。
すると! なんと!、カラスが啄んだ獲物の正体は、予想外のクマゼミ幼虫だった。

地面には嘴で穿った穴が残っていた。

カラスとの距離が近すぎたため、獲物を咥えたまま逃走してしまったのは残念。
しかし、夏本番セミの季節にはまだ早いこの時期において、クマゼミ幼虫を引っ張り出していたことは驚きだ。
カラスが地中に潜んでいるセミの幼虫を掘り出しては食べる、ということを初めて知ったのは、
2016年の夏のことで、場所は東京都の代々木公園だった。
詳しくは『はじめて見たよ!セミのなぞ』(少年写真新聞社:2017)に写真が掲載してあるが、
(『野鳥のレストラン』(少年写真新聞社:2022)にも掲載している)
セミが次々と羽化する夏の頃ならともかく、まだニイニイゼミも登場していないこの時期に(そろそろか)、
それもクマゼミ幼虫を掘り出したカラスの眼力たるや、それは改めて、凄い!としか言いようがない。
羽化日当日なら幼虫が穿ったごくわずかな穴が地面に開くので、おそらくカラスはそれを探しだして掘り広げるのだろうが、今の時期だと、何かしらの理由によって、弾みでもって、地面に灯り窓を穿ってしまったのか、それとも薄くなった地下トンネルの天井が盛り上がり運動をして、カラスの目を惹いたのか、そのどちらかだろうと推測している。