2022年06月10日

Diptera 三昧〜その4〜 プラスα

三股町

Diptera 三昧と称して、先日7日に観察した内容で3回の記事を書いたけれど、今日のDipteraは先月29日の夕方以来、ほぼ毎日のように観察してきたアシナガバエ科の一種について少し整理しておこうと思う。

このアシナガバエ科の一種はおそらく、キイロアシナガバエ属(Neurigona)の一種ではないだろうか。国内には4種記載されていてまだ数種類いるようだ(熊澤辰徳:『知られざる小さきハンター、アシナガバエの世界』;ニッチェ・ライフVol.3 (Dec.2015) による)。

件のキイロアシナガバエsp.の習性として、、、、、、、、

仕事部屋の外壁、それも地面に近い低い位置に張り付いたようにじっと静止していることが多く、その時の姿勢は必ず頭部を上向きにしている。人が近づく気配には敏感ですぐに飛び立つも長く飛翔することは少なく近い場所に落ち着く。

この時期から葉上でよく見かける同じアシナガバエ科の仲間でマダラアシナガバエ類(この仲間も近似種が数種いるようだ)↓ が葉っぱテーブルの上をセカセカと歩き回る姿とは対照的である。

0610マダラ-6093654.jpg

0610マダラ-6075000.jpg


で、家壁に止まっているのはたまたま家屋が生息場所にあっただけのことで、本来なら樹木の幹上に静止している。
家壁から近くに植わっているヒメユズリハやビワ、クワ、サクラ、イチイガシなどの幹を丹念に探してみたところ、
家壁に一番近いヒメユズリハの幹上でしばしば見つかることがわかった。
下写真の中央にあるのがヒメユズリハで、キイロアシナガバエsp.が主に静止している家壁は、縦窓のあるあたりから奥の角っことそこを左へと回り込んだ1mほど先までで、極めて狭い範囲に限られており長さで表すと3mほどの範囲に収まる。ちょうどこの域内はほぼ終日、日陰になっていることが特徴で(東向き)、直射日光が当たる場所では一度も見てない。薄暗い林内が主な生息地のようだ。

0610ヒメユズリハ-6104440.jpg
 OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO

雌雄の見分け方は腹端の形状が一番分かりやすい。背面からは確認しづらく横から見るか、あるいは顔の額の広さでも分かる。オスは額が狭く、メスは広い。雌雄とも額は白く目立つ。

写真画面左がオスで右がメス
雌雄アシナガ5974-3.jpg


メス
0610アシナガ♀-6075354.jpg



上写真でもわかるように、これまでの観察で確認できた獲物は全て、トビムシ類のみ。トビムシを専門に捕食すると断言しても良いのではないか、と思えてきた。
この捕食習性については、狩の現場をまだ見ることが出来ていない。果たして、彼らは落ち葉絨毯のどこでどのようにしてトビムシを捕らえるのだろうか。
ヒメユズリハの根本付近は大量の落ち葉が蓄積していることから、ここが主な猟場になっているかもしれない。

5月30日の記事に載せた配偶行動も興味深い。
食事をとり行うのが家壁や樹木の幹上であるなら、配偶行動も同じ場所で見られる。静止しているメスの下方で跳ねるようなホバリングを繰り返すオス。その後、ピタリとメスの後に寄り添い前脚をメスの背中におく、ということは前記事で書いた通りだが、その後、交尾が成立したカップルをまだ見ていない、これもとても気掛かりなところだ。

ヒメユズリハのすぐ横に生えるツワブキ葉上で、正体不明のハエ類が獲物を捕食中だった。もしやキイロアシナガバエsp.が犠牲になったのだろか?幹上にじっとしているのだから狙われてもおかしくない。最初はそう思ったけれど写真を拡大してよく見ると、獲物のDipteraは別種のようだ↓ 
0610ショクニクバエ-6075317.jpg


「Diptera三昧」ということで4回続けてDiptera観察の記事にしてみた。
Dipteraはたいへん大きいグループでもあり、また分類、生態ともまだまだ未知のことが多い。身近にみられる普通種ですら種名を調べるのが難しく、なかなか厄介でありながらも好きな虫でありつい夢中になってしまう。今後も観察の内容に進展があれば整理して書き記したい。

プラスα
〜蛾の話題:ハチマガイスカシバ〜

先日、8日の午前8時44分。
庭のクヌギ小木近くの草むらで、ハチマガイスカシバを発見。
クヌギ小木では5年前の2017年7月に産卵を観察している
0610ハチマガイスカシバ-6085654.jpg
 OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro マクロフラッシュ STF-8

発見当初は翅を体に沿ってピタリと閉じており、一見して泥バチだろうと思ったが、飛んで別の場所に着地して翅が開いた状態でようやくスカシバだと確信した。
体の新鮮な様子から羽化してまだ日が浅いのではないだろうか。

0610ハチマガイスカシバ-6085671.jpg
 OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro マクロフラッシュ STF-8





posted by やまかます at 21:28| アブ・ハエ