2022年05月12日

ギンシャチホコのその後

三股町

先日、5月4日、ギンシャチホコの繭から成虫が羽化していた。

繭は昨年、12月19日にコナラの幹で見つけてあったもので、同じ幹にもう一個、繭があった。
そのもう一個の繭の中には寄生バチの繭が入っており、ギンシャチホコが羽化する数日前にこちらも羽脱していた。

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寄生バチは本来なら自分が紡いだ繭に穴を穿って外に出た後、さらにギンシャチホコの硬い繭壁にも脱出口を穿つ必要がある。華奢な体つきだけど、それなりに鋭いアゴと筋力があるのだろう。けれど、私が繭をコナラの幹から剥がしてケース内に転がしてあったので、その二度手間は免れたわけだ。

一方、ギンシャチホコの成虫は羽化する前に蛹の頭頂にある突起でもって繭壁に圧力を掛け、自分の体がギリギリ通り抜けるだけの丸いハッチを開いて繭の外に出る。外に出てから高台へと移動して翅を伸ばす。寄生バチは流石にその秘密のハッチの仕組みまでは熟知していないのだろう。
繭壁の頂部近くにポッカリと開くようあらかじめ細工が施されているところは、イラガの繭とよく似ている。

ギンシャチホコの成虫が、硬い繭から脱出する様は是非見てみたいとは思うが、それがいかに難しいかは言うまでもない。
たいへん難しいけれど、ずいぶんと昔、別種のイラガでその羽化の様子を撮影したことがあり、
『里山の昆虫ガイドブック』(阪急コミニュケーションズ:2002年)や、『いのちのカプセル まゆ』(ポプラ社:2008年)に掲載している。

イラガの硬い繭の頂部に丸いハッチがパッかんと開き、そこからイラガの成虫が(正確には最初に蛹が)窮屈そうに出てくる様子を撮影するために、色々と作戦を考え、繭を集め(5個程度だったけど)準備したのも懐かしい。
考え抜いた撮影の段取りが整ったあとは、もちろんその瞬間を毎日待つ忍耐が必要だが、待つ時間帯を絞り込むことができたのは幸いだった。
当時はフィルムカメラでもあり、ストロボの露出や照明の具合なども細かく調整してその緊張感たるや、今とは比べものにならないが、もう25年も昔の話(1997年の7月)。

posted by やまかます at 21:56| ハチ・アリ