2021年06月22日

新刊のご案内

来月(7月7日)刊行予定の
『子育てがんばる、カメムシのおかあさん』(小学館)

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サブタイトルが「ベニツチカメムシとボロボロノキ」とあるように、ボロボロノキに寄り添うようにして生きるベニツチカメムシの暮らしを描いた写真絵本。
東京に暮らしている頃から気に掛けていたけれど、九州に移転して13年目、ようやくにして形にできた。
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ボロボロノキ果実(6月2020年)

ベニツチカメムシもボロボロノキも、九州以南に分布している。ボロボロノキと深く関わるベニツチカメムシの生息地は、ボロボロノキの分布と重なり、ボロボロノキが生えている森や林は、九州全域に局地的に点在している。
2008年から撮影で通ったフィールドは北から佐賀県神埼市、福岡県久留米市、鹿児島県曽於市、宮崎県延岡市、日南市だが、その中でも一番足繁く通ったのが、県北に位置する延岡市。(一度だけ奄美大島の生息地を案内していただいたこともあった、、、)
延岡市の街中にある愛宕山や少し山際にある植物園には四季折々通った。
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愛宕山(5月2020年):標高250m

延岡までは高速を使って片道2時間掛かるが、最も近い撮影ポイントは鹿児島県の曽於市。曽於市財部町の観察ポイントを発見できてから観察の頻度を高めることができ、撮影の進行もだいぶテンポアップできた。特に難しいメス親の育児に関わる撮影は、この財部町の観察ポイントで実現できた。ボロボロノキの特徴を覚え、頭の中にイメージが描けるようになったおかげで、落葉した冬場でも自信を持ってボロボロノキを探すことができるようになったことが大きい。
池袋のジュンク堂書店で開催された「かめむしイベント」に持参したボロボロノキの枝は、東京に立つ前夜に採りに行った。その場所が、往復1時間ちょっとで済む財部町のポイントだった。

6月下旬となった今頃のフィールドでは、例年なら子育てに忙しいメス親がボロボロノキ果実を運んでいるか、あるいは巣内から外に出て果実に集っている若齢幼虫の赤い群れの塊が見られる。

今回の著作でカメムシの児童書が4冊目となった。
@2002年、『カメムシ観察事典
(構成/小田英智、文・写真/新開孝)偕成社
A2014年、『わたしはカメムシ
(ふしぎいっぱい写真絵本25)ポプラ社
B2016年、『うまれたよ!カメムシ
(よみきかせいきものしゃしんえほん28)岩崎書店

世の多くのカメムシ嫌いの方々にも、一度くらいは手に取って欲しいものだ。

延岡市は県北にあって三股町からは遠い場所になるけれど、ベニツチカメムシ以外の虫や自然にも魅力を感じるフィールドに恵まれている。
三股町に仕事の拠点をおいてからは遠出をできるだけ控えるようにし、出掛けるにしても片道せいぜい1時間以内の範囲に絞るよう心掛けてきた。経費を節約することも大きいけれど、できる限りフィールドでの滞在時間を多く取りたいという気持ちが強い。延岡のフィールドはしかし、県南とは自然環境が異なるため遠出する意義は大きく、そして何より土地柄に惹かれるものもあり出向いた時は少なくとも一泊以上滞在している。私は幼少の頃から瀬戸内の魚を食べて育ったので(松山の母親の実家は魚屋だった)、内海の豊かな魚種が並ぶ魚屋が暮らしの中にあるのが好ましい。何度も書いたけれど、延岡の店では必ず魚を買って帰る。撮影の仕事だけでなく食の楽しみもあって、延岡通いはこれからも続けたいと思う。地酒の米焼酎も素晴らしい銘柄がある。
ベニツチカメムシに一つの区切りをつけたところで、延岡のまだ訪れていないフィールドにも足を踏み入れたい。

posted by やまかます at 17:21|