2019年11月05日

キハダの実

蝶が好きなお宅の庭木には、キハダが一本くらいはあるかもしれない。

ミヤマカラスアゲハの飼育には欠かせない食樹であり、
もしや母蝶が飛来するかもしれない、という期待もあるだろう。
生息地から離れた街中であっても、稀にそういうことがあるから、気まぐれな母蝶にラブコールを送りたくなるというものだ。

かなり、いやウンとウンと昔、ある昆虫雑誌に、ミヤマカラスアゲハの飼育法を紹介した記事があって、食い入るように読んだことも懐かしい。飼育ケースは大型のタッパー容器を使う方法だった。
記事の中で、キハダは水揚げが悪く、萎れないようにするため密閉容器を使うことを薦めていた。
飼育する頭数にもよるが食べる量も半端ではないので、新鮮な葉を供給するには庭木に植えておくのが一番とあった。
確かにキハダはどこにでも生えているものではなく、かと言って山地の自生地まで通うのもほとんど不可能。
で、記事の著者はキハダの実を希望者には差し上げます、とまで書かれてあったと思う。
実生から育てて、食樹として使えるまで成長するにはどのくらいの年数が必要かは忘れた。

しかし結局、私はミヤマカラスアゲハの飼育をする機会に恵まれることはなかった。
成虫の採集どころか目撃すら果たせなかったと思う。
ミヤマカラスアゲハはかなり長い年数の間、憧れの蝶であり続けた。それはそれで良かったような気もする。今となってみれば、、、。

さて、都城市内の公園に植えられている、キハダを見てきた。
ここは私の自宅から一番近い場所にあるキハダ、になる。雌株なので果実がたくさんなっていた。
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このあと熟すと黒くなる。

かつて憧れだったミヤマカラスアゲハは、今では四季折々、庭の花壇に飛来し自宅林のカラスザンショウで繁殖もしている。
カラスザンショウは大木なので、卵や幼虫を見ることは難しいが、稀に地上近くで蛹が見つかることがある。

飼育したいという、昔には抱いていた欲望は自然と薄れて、あるがままの姿を見れる時に見れればいい、と思うようになった。追い求めなくても、向こうからやって来る環境に住んでいるのだから当然と言えば当然。

キハダでは、ミヤマカラスアゲハ以外に、エサキモンキツノカメムシも繁殖する。
キハダの果実は、エサキモンキツノカメムシの幼虫たちが育つための必須の栄養源になるためだ。

キハダの樹冠を眺めたあと、少し歩いていると、イロハカエデの梢にいたキジバトと目があった。
日陰になっていたので、露出をちょいプラス補正。
1105キジバト-0954.jpg


クルクルと地面から舞い上がったムラサキシジミが、またすぐに降りてきて、
草の上の朝露を吸い始めた。

1105ムラサキシジミ-0950.jpg




posted by やまかます at 21:56| 樹木