鹿児島県 出水市〜伊佐市
昨日見て回ったシナアブラギリ(オオアブラギリ)では、オオキンカメムシのメス成虫が3頭しか見つからなかった。
そこで今朝は、別の場所でシナアブラギリを探すことにして、昨日の場所から南に位置する谷間に入ってみた。
見落としている繁殖木があるのではないか?そこを突き止めておきたかった。シナアブラギリの本数の多さからして、繁殖木(幼虫が生育している木)が一本も見つからないのがどうも腑に落ちないからだ。場所を換えて探してみる必要がある。
県道から外れて川沿いの道を進んでいくと、すぐにも現れたのは意外にも、
アブラギリだった。
昨日、道沿いに生えていたシナアブラギリの一番近いものでは2キロほどしか距離は離れていない。
シナアブラギリ(下写真左)は、葉、果実ともに大きく、また果実は下に垂れ下がる。
いっぽう、アブラギリ(下写真右)の果実は上向きにつき、果実の形状も一目で違いがわかる。
シナアブラギリ アブラギリ
最初に見つけたアブラギリには、成虫が多数、果実にたかっていた。その成虫たちは羽化して日の浅い今夏産まれのようであった。
谷筋の道を進んでいくと次々とアブラギリが現れ、いやその数たるや20数キロ以上に渡って延々と続いていた。本数にしたら一体どのくらいになるのか、気が遠くなるほどの数字が頭の中にちらつく。
所々では明らかに林を成していて、そこから川沿いに広がっていったのだろう。
いっぽう、シナアブラギリは不思議なことにまったく生えていない。生えていないというか、もともと植えていないのだろう。アブラギリとは敢えて植える場所を違える必要があったのだろうか?
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
川の対岸に並んでいるアブラギリ(上写真)。是非とも花の時期にまたこの谷筋を訪れたいものだ。
谷間は白い花で埋め尽くされるのではないか、そんな光景を想像してみてみるが、私の想像などは及びもしないに違いない。
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
林道からすぐ入れるアブラギリ林もあった。そこでも繁殖の確たる証拠となる幼虫の脱皮殻がすぐ足元に転がっていた。
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
幼虫のステージはほとんどが4齢と5齢で、5齢のなかにはもうじき羽化しそうなほどパンパンに肥えたものもいる。新成虫の姿もある。やはり、幼虫期の終盤に入っているのだろう、実際、どこのアブラギリでも夥しい数の成虫が果実や葉裏などにいくらでも見つかり、繁殖木がこれほど多い場所は初めて見た。
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO GODOX TT350
アブラギリ果実で吸汁する、5齢(終齢)幼虫。
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO GODOX TT350
新成虫は探すまでもなく、次々と視野に入ってくる。探して探してようやく3頭、というシナアブラギリとはまるで様相が違う。この違いはなにか。
OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
ある一本のアブラギリでは、1齢幼虫群(写真では近くに卵殻も見える)が3群見つかった。これは意外だったが、だいぶ産卵が遅かったようだ。ちなみに、オオキンカメムシの卵期間は4日前後で、幼虫全生育期間は40日前後とされている。この写真の1齢幼虫たちが成虫になるのは、10月に入ってからになるだろう。
上がオス、下がメス OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO FlashQ G20U
まさにアブラギリの谷と言える場所に、今日は偶然にも行き着いたのだけど、そこは「オオキンカメムシの里」とも呼べるほどの賑わいに溢れていた。
まだ結論づけるのは早いが、オオキンカメムシの嗜好性としてシナアブラギリよりかアブラギリを選んでいるようにも感じ取れた。昨日、シナアブラギリにわずか3頭いたメスは、アブラギリで育ってそこから分散していくなかで、流れて着いたのではないか?その可能性も考えられる。
昨日の記事にも付記として補足したが、シナアブラギリに来ていたメスのうち1頭は去年産まれの個体であった。
おそらくはすでに産卵を終えたものと見え、ほどなく死んでしまった。アブラギリで多数見られた成虫のなかにも当然、昨夏産まれの古い個体も混じっているはずだ。孵化直後の1齢集団がまだ見られることもそれを裏付けている。卵塊やこれからまだ産卵するであろうメスもごく僅かながら残っている可能性もあるだろう。シナアブラギリのすぐ近く、数キロしか離れていない場所に圧倒的な量のアブラギリが生えている。この状況では、シナアブラギリを繁殖木として選ばないかどうかを考える上では整理がつきにくい。もしも、シナアブラギリがある程度の量生えていて、しかもそこがアブラギリの産地からかなりの距離があり孤立していたならどうだろう?
シナアブラギリがオオキンカメムシのホストになるのかどうか?
この疑問を解くためには、シナアブラギリが孤立してまとまって生えているフィールドを探し当てる必要を感じる。
昨日の午後は、出水市のツル越冬地も訪れた。オオキンカメムシ以外の観察などについてはまた明日。
posted by やまかます at 21:41|
カメムシ