2021年09月11日

蟻ハンター

宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 (9月9日〜10日)

すぐ傍に大きなミズキがあって、見上げると葉裏にパンダ模様のアカスジキンカメムシ幼虫が群れていた。
4齢と5齢が混じっているようだが、高くて撮影は無理。

地面にはヒトツメカギバが、「ここのミズキで育ちました」と言わんばかりに、ミズキの落ち葉に止まっていた。
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ほぼ3m四方の狭い草地に目をつけたのは、初日の9日。
ここで見つからなければ厳しいことになる。自分に言い聞かせるように確信を持って、地面に目を這わせること30分。
黒っぽい虫が草間をすばしっこく駆けた。アリじゃない。
「いた!!」
片膝をついて顔を地面に近づけてみると、薄桃色の「逆さハの字」模様がくっきりと見えた。
しかし、すぐに葉陰に潜り込んだ。ここで見失ってはならぬ、とすぐさま、しかし、
そっと葉をかき分けてみれば、うずくまったまま動かないハリサシガメがいた。
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「おお〜!!12年ぶりのお目見え」
九州では、2009年8月30日に北九州市の平尾台でペアを見て以来になる。
さらに遡れば、本種を初めて撮影したのは2003年の8月19日(愛媛県面河村)だった。
「こんなに小さかったか!」というのが久しぶりに対面しての感想だった。
体長は15ミリ前後だ。

平尾台では特に探し歩いていたのではなく、足早に歩いていてたまたま目に入っただけのことだったが、草が生えていない土が剥き出しの細道だったから目立ったのだろう。今回はそうはいかない。

草地はわずかに地面が見えるが、ほとんどは低い草で覆われており枯れ草も入り混じって、徘徊するアリたちの姿もすぐに見失う。それでも、ハリサシガメの生息条件としては、
1)草丈が低い、
2)日当たりの良い草地、である。そして何より、
3)アリの姿が視野の中には常に入ってくる。
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9日、初日は1頭しか見つからなかった。幼虫も探してみたが、こちらはさらに難易度が高い。這いつくばるようにして探したが、ついに見つからず。羽化時期に入って幼虫は残っていないのだろうか?
10日の午後、再び同じ草地に立ち、地面を舐めるように見つめること1時間半。長い時間、狭い草地にずっと座り込んだり、ジグザグ牛歩戦術に出たりと、懸命に探し続け、流石に疲れ切って挫けそうになった。

これはもう無理か!と諦めかけた時、草地の端っこ、スロープになったところで黒い影が動いた。
「クロオオアリ、かい!?」と姿を見失う前に手で摘んだら、それがなんと、ハリサシガメだった。
前日の個体よりか明らかに小柄だ。クロオオアリか?と見間違えたわけだ。摘んでも刺されなかった。

ハリサシガメをそっとケース(落ち葉を敷いた)に入れて、そこへクロオオアリも放り込んでみたら、あっという間に口吻を突き立てて押さえ込んだ。その動きの俊敏さには驚いた。口吻は、頭部と胸部の間の柔らかい部分に刺しこまれ、アリはすぐにグッタリとなった。
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狭いケース内を歩き回るアリの姿に、機敏に体の向きを変えてはロックオンする。アリが最大限に近づくまで、辛抱強く待ち伏せる。
まさに、蟻に特化した、凄腕のハンター、である。


〜使用機材〜
OM-D E-M1 MarkV
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
GODOX TT350 + XPro O

OM-D E-M1 MarkU
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
posted by やまかます at 20:28| カメムシ